5/28「都市革命」「コンパクトなまちづくり」
こんばんは!夜も次第に蒸し暑くなってきましたね。扇風機を買おうか迷っている今日この頃です。佐々木です。
5/28(木)のゼミ報告をさせて頂きます!
今回のゼミでは、
・黒川紀章「都市革命──公有から共有へ」(中央公論新社、2007)
・財団法人都市計画協会「コンパクトなまちづくり──改正まちづくり三法による都市構造改革」(ぎょうせい、2007)
という二冊の参考文献を取り上げました。
一冊目は現代の世界・社会・価値観等の変化が論じられ、それに対する都市問題やまちづくりの面からのアプローチがなされた内容となっています。二冊目は、まちづくり三法の改革の背景や効果を中心に、様々な地域の事例を絡めながら解説されています。
この二冊を全員が事前に読んだ上で、
・印象に残った点
・著者への賛成意見・反対意見・疑問点
・総合政策的観点からのアプローチ
という三点について、グループ及び全体でディスカッションが行われました。
また今回は、ニューヨークに一年弱留学していたゼミ生の一人が先週帰国し、初めて本ゼミに参加した会でもありました。お土産話ついでに、アメリカの都市の様子等も聞くことができ、とても有意義な時間となりました。
議論した内容のうち特に盛り上がったもの、深く議論できた内容について以下に抜粋します。
○情緒安定機構(コミュニティ)
・既存の中間領域(情緒安定機構)はあまり機能しているか?
…機能の実感のある中間領域例として、銭湯、立ち飲み屋、スポーツバー、ファンクラブ、喫煙所etc.
・都市は一定の目的をもとに似たような人々(ex.インテリ層)が集まる場所。そこで都市主導で人工的につくられる中間領域は均質化し、中間領域となりえないのでは。
・居場所論
…図書館、公園(!)が居場所調査で上位。家、学校・会社以外の居場所の無さ。退職間もない団塊世代の働ける公共施設創設案など。
・どうして路地が大切か。広場ではいけないのか。
…国民性の問題も。広場でかかわりを求めるには主体性必要。日本人は苦手。路地はその地理・立地条件から、自然発生的に関わりが生じやすいのでは。
・現代のコミュニティをめぐって
…家庭・学校(職場)の関係性が満たされているとしたら中間領域は不要か?
…学校や企業は私利・競争が目的。その目的のもと集まった人々が良い関係性を築けなくて当たり前。中間領域の前に、家庭、学校など基盤となるコミュニティの在り方を考えては。
…仮想空間(インターネット上のつながり、ヴァーチャルな世界)は情緒安定機構の機能を担えるか?
…小学校~高校、あるいは就職後のコミュニティの少なくなる構造上の問題
○コンパクトシティ、都市の在り方
・プライバシーとコミュニケーションの対立。集約型都市はプライバシー保護と両立できるのか?
…緩いつながりの希求。
・三法改正は機能しているか?全体に十分な効果上げたとは言えないのでは。
・中央を機械化(ex.エヴァンゲリオンのマギシステム)、周辺部をコンパクトシティとして自治させては?
…2045年問題との関わり
・コンパクトシティの弱点(残された地域の問題)
・コンパクトヴィレッジの提案
…市街地ばかりに集約すると更に過疎の深刻化。また農村部から追い出され幸せか?農業と両立し田舎でも集約できれば、抵抗も少ない。集約は大都市や市街地に限らない。
個人の感想としては、「都市革命」を発端にしたコミュニティに関する問題提起に興味を持ちました。
日本人の国民性とコミュニティの関係の話、もっともですよね。プライバシーを重んじ、地域内での交流も面倒に感じてしまう日本人だからこそ、中間領域を皆が持つためには、ハード面の施設や団体を作るだけでなく、趣旨、入りやすさ、話しかけやすさといったソフト面の議論もしていかなくてはならないですね。それにしても、地域コミュニティから目的重視の時間コミュニティにほぼ移行がもう済んだものかと思いきや、銭湯や喫煙所という場所で学生でも未だに交流が生まれているという声には私は驚きました。結局のところ、こういった中間領域はどの程度精神的に効果があるのでしょうか。時間コミュニティか地域コミュニティかでも影響は異なりそうですね。統計調査など探してみたいところです。
仮想空間がコミュニティになりうるかという話も面白いですね。ネット上のつながりはface-to-faceのつながりには及ばないとよく言われる一方で、対人関係がストレスになるためにネット上の中間領域を選ぶ人もいることですし。「人は見た目が9割とも言われる面もあり、逆にネット上の方が印象や偏見が取り払われた本当の自分で勝負できるのでは」という指摘もゼミ生からあり、私はかなりはっとさせられました。このあたりは精神的には、そして長期的にはどうするのが望ましいのか。既に議論されているのか調べてみたいところです。
ついでに…。仮想空間の話から私は「セカンドライフ」というゲームのことを思い出しました。現実世界にそれはそれは忠実なヴァーチャル空間で、チャット、買い物、ビジネスなどをしながら生活を送り、ゲーム内の仮想通貨で利益が生まれれば現実に課金できるのだとか。これが爆発的にヒットすれば、仮想空間のコミュニティのみで生きていくこともできるかもしれないと思うと恐ろしいものです。恐ろしい反面、万人にそれがいけない理由について科学的根拠を以て説明しなさい、と言われれば答えに窮してしまいそうな。仮想空間の問題は奥が深そうです。
現状では中間領域が“逃げ場”になってしまうという話も出ましたが、そう認識せざるを得ない事が悲しいなあと感じます。家族・学校・職場が、情緒安定機構として、また各人の個性を生かせる場所として機能した上で、プラスアルファの場所として中間領域も選び取れるといいのですが。そこまで遡って変えていくとなると、社会思想や経済構造といった話に立ち戻るのでしょうか。時間と心を最大限まで削って競争しなくても、大人になれて生活できる社会になるといいのですが。
来週はグループ発表の3団体目です!ゼミ生にweb上でアンケートをとるなど、かなり精力的に準備をしているようです。期待が高まります!!(記:佐々木)